まよなかの映画「電車男」レビュー。

真夜中の…「映画電車男」レビュー

髪が乾くまでの間を利用して、映画版・電車男電車男 スペシャル・エディション [DVD]レビューを書かせて頂きます

◆とにかくカワイイ電車男エルメスは大人。

「大人っぽ過ぎるんじゃ…」
と思っていたけど、映画に対する好感触は中谷美紀の自然で真摯な演技に負うところが大きかった。劇中、電車にもエルメスにも名前を名乗るシーンはない。人物は全て「名無しさん」。全く気にならずに観ることができた。

(テレビはこうは行かないよね。テレビの電車男が「山田」なのは、市居の人の名であるとともに「山田孝之」をリスペクトしているのでは?エルメスには「青山沙織」という名が与えられた。)

◆オタクの造詣は細かかった。

テレビ版では赤ザク、ボトムズなどがあったが23歳のオタクに「ボトムズ」はどーかと思う。映画版の電車の部屋の本棚の漫画は全て「花とゆめ」コミックスだった!イノセンスのポスターも貼ってあったけど、やはり恋愛の素養が全くない人物ならば恋をしたいと思わないのではないか。現実の恋とはちと違う「花とゆめコミックスの恋」、オタは好きそう。

電車男がどの媒体でも成立できる理由のひとつに「名無しさん」の処理といのがある。

映画では電車とエルメスの恋の邪魔にならぬよう、キャラクターが要約されている。
(要のシーンでは数えきれない人が応援してくれるが)
引きこもりオタク瑛太、看護婦国仲涼子ちゅらさんかよ!)、毒男3トリオ(岡田義徳
三宅弘城坂本真)エリートサラリーマン佐々木蔵之介、その妻木村多江
毒男達が大げさに被弾するシーンがあるが、特別な扮装はなくリアルだった。

テレビでは、豪華ゲストや若手芸人が一瞬登場しておいしい。しかし、阪神タイガースファンが笛を吹いたり、Jリーグファンが常にフェイスペインティングをしてカキコしている描写は引くし、嘘くさい。

名無しさんの処理は、アスキーアートが動いたり、サンライズのロボットアニメのように
ナレーションで画面を分割してみせたり(コンバトラーVみたく。古いネ!)していた。


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注:ここよりネタバレゾーンです。

秀逸だったのは、電車のホームでヘコむ電車に対し、反対側のホームに「名無し」全員が立ってエールを送るシーン。「岐路」「見守る」「電車」というイメージが生きるし、「エヴァンゲリオン」「千と千尋」をも彷彿とさせるシーン。

◆電車はスレ住人にたよるだけでなく、自分だけで、エルメスのためにパソコン選びをする。

カタログに貼られた無数のポスト・イットを見て涙するエルメス

電車は自分と彼女のスペックの壁を乗り越えて彼女に告白するべく、夜の街を走る。
エルメスも、ひとりで秋葉原へ…。
パソコン、ギャルゲー、電気ネオンの街を、電車を知るように歩いていく。

◆電車は雨にぬれてジャケットを捨て、汗だくになってシャツを脱ぎ、コンタクトは涙で流れて、ガンダムの「百式」Tシャツとめがねのアキバちゃんに戻ってしまう。

オタクに戻ってエルメスに告白。何度も何度もつまりながら…。
(このへんは事実に忠実)
電脳街アキバでキスする二人。いつのまにか、まわりのネオンが「キター」の祝福の嵐になっていく。空にはキターの花火。このへん、実に幻想的なエフェクト。

◆手を繋ぎながら、エルメスの回想…。

暴れるおじさんと会ったあの日、震えて帰る電車を見るエルメス「あ、こわかったんだなあ…って思いました。あなたはいつも、優しくて、いつもプレゼントをくれる。
メールは私にとってただのメールじゃなくて…」

(電車がエルメスの家で緊張のあまりこぼした角砂糖を、電車が帰ったあと拾いながら愛しくながめて)
「砂糖は、ただの砂糖じゃなくて…」

このあたりのせつなさ、ミョーに泣けた。私の隣で独りでみてた女の子も、右にいたカップルの女の子も、私も泣きみそ。

◆スレの住人たちも変わりはじめる。

瑛太は、こざっぱりとした服をきてバスにのる。
すると世にもかわいい女の子と乗り合わせて…。(冬ソナかよ!)
国仲は昔の男との写真を潔く、紙飛行機にして飛ばす。


◆そして、ラスト…。

エルメスに、スレの住人の事を話そうとする電車。その時、定期券が落ちる。
電車が拾うと、そこは冒頭近くのシーンに戻っていて、オタクなままの電車は再びとなりに座った女の子に定期を渡す。それは、隣の隣にすわるエルメスのものだった。
エルメスに出会わず電車を降りる電車男―。

今までみていたのは電車の夢?妄想?
いや、いや、「出会う前から同じ沿線にのっていた」時間軸に戻ったのか?
いやいや、そもそもこの話自体が壮大なネタ(つくり話)かも、という示唆…?

と、なんとも粋な感じで映画は突然に終わるのであった。

ヤられたー。

で、スタッフロールが終わると、またおじさんが車内で暴れている。
伊藤淳史電車男が、伊藤美咲エルメスをかばって勇気を出す。
あばれたおじさんを、イケメンとなった山田孝之が取り押さえるー。

TV版に繋ぐためのシーンで終わるのであった。
(そういえば、フジの「ラジオびんびん物語」の最終回が「アナウンサーぷっつん物語」の第1話につながってたよね!←逆の可能性あり)

あざとい演出ではあるけど、これを見せられたことによって
「テレビ版が全く別の二人の話である」意識がうえつけられた。
メディアミクス展開されていく電車男が、あの事実の映像化であり、またそうでもないという可能性をうまく表しているように思いました。

1800円の価値アリ!!!!

サイコーに面白かったよお。

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※ おまけ「映画男」

ご高齢の両親を連れて映画館にきている男がいた。ご両親をいたわろうともせず「入れるってー。はやく、はやく」と子供のように叫ぶオタク。
29歳にも、47歳にも見える。
六本木ヒルズ観光のついでにきたのか、友達がいず両親とくるしかなかったのか…。「危ないからひとりで六本木なんていったらダメよ!」とか言われてるのかも、こ、こわい。
以下、その他の客。

◆スケボーカップ
映画デートなのにスケボーを持っている男がいた。

◆オタク男と美女カップ
シンパシイを感じて観にきたんだね。いつまでも仲良くね。

◆おひとりさま
わたしと、隣の女の子。宮部みゆきタイプ。六本木ヒルズに来るんだから化粧くらいしろよ!

◆ごくフツーカップ

◆おじさんとOLカップ
不倫くさい。スタッフロールの途中で退出。エッチぽい。

◆OLどうし
結構いました。

                           以上