【歌舞伎しるこ】とメイドカフェ

miyurin2006-04-21

 職場に相模屋のあんみつが差し入られ餡子を舌にのせていると、あるフレーズを思い出した。
【ニコライの鐘が鳴る鳴るお茶の水〜】…お茶やお汁粉をを給仕するときに口上を語る「歌舞伎しるこ」
という甘味喫茶が、昔あったのである。今でも営業している店もあるかもしれないが、
新橋にあった「花屋」(もしくは「華屋」)はなくなって久しい。
そこではメニューを「あんみつ」「かき氷」とはいわず「野崎村」「蜻蛉日記」と言っていた。
口上はさきほど挙げた「ニコライ堂」のように、すべてが歌舞伎に関わっているという訳ではなく、
俳句のような、詠い文句的なものが多かったと思う。【太閤を泣かせるほどの茶々もあり】
【元はわたしも中国生まれ、ようすあって都の住まい、ひととき宇治まで蛍狩り】などなど。
味の記憶とあいまっていくつかのフレーズを覚えている。
気恥ずかしく感じる時もあったけれど、ちょっとした非日常空間だったと思う。
店のなかでの約束事、ささやかなコミュニケーション、口上を駆使するところ…意外にもこれは
メイド・カフェと同じシステムであった。

(初出:隅の演芸平成18年3月号)